苧麻
苧麻(ラミー)は多年草の茎から採れる天然の靭皮繊維で、日本では古くから上布(じょうふ)として親しまれてきました。上布とは、繊維の細い部分を丁寧に抽出し平織りで織り上げた高級夏用布で、涼感と薄手ながらも上品な光沢が特徴です。
繊維は収穫後、茎を一定期間水に浸すか野外で寝かせることで微生物や露・日光の力を借りて不要な柔組織を分解します。十分に柔らかくなったら破砕や剥皮で外皮を取り除き、櫛通しで精製・ふるい分けを行い、長くまっすぐな部分だけを紡績して糸を作ります。
苧麻繊維は引張強度が高く、吸湿速乾性・通気性にも優れているため、汗ばむ季節でもべたつきを感じさせず、使い込むほどに光沢と肌馴染みが増していきます。伸縮性はほとんどないためシワになりやすいものの、それが味わいとして愛されてきました。病害虫への耐性が高く、灌漑をほとんど必要としないため農薬・化学肥料の使用量を抑え、水資源や土壌への負荷を低減する持続可能な素材です。
原料の主な産地は中国(湖南・浙江省)やインド、ブラジル、フィリピンなどですが、日本では新潟県の越後上布や滋賀県の近江上布など、地域ごとに異なる技法でつくられる上布が文化として受け継がれています。
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