藍染
藍染(あいぞめ)は、藍という植物由来の染料を用いた古来からの染色技法です。日本ではタデ科の一年草である蓼藍(たであい)が古くから用いられ、沖縄では琉球藍、インドや東南アジアではインド藍(木藍)など、地域によって用いられる植物が異なります。これらの植物から抽出されるインジゴチンという藍色の色素を含む染料が使われてきました。藍染の歴史は古く、飛鳥〜奈良時代に技法が伝来したとされ、江戸時代には木綿の普及とともに庶民の生活に広く浸透し、藍色に染まる町の様子から「ジャパン・ブルー」と称されたという逸話もあります。
藍の原料として代表的なものに、日本で古来使われた蓼藍と、インドや熱帯地域で用いられたインド藍があります。蓼藍は温帯の日本で栽培される一方、インド藍は高温多湿な気候に適しており、葉に含まれる色素の量が多いため、濃く澄んだ青色を得やすいのが特徴です。蓼藍は「蒅(すくも)」と呼ばれる乾燥・醗酵工程を経て染料原料となり、色調は僅かな赤みを帯びた深い青に、インド藍は固形化した藍錠などに加工され、比較的ピュアなインジゴに近いクリアな青を生み出します。この違いは、染め上がった布の色合いや風合いにも表れます。
藍染の染色は、インジゴチンという色素の還元と酸化という化学反応を利用しています。インジゴは水に溶けないため、そのままでは繊維に定着しません。染液中で還元によって可溶化されたインジゴは繊維に浸透し、空気に触れて酸化することで再び不溶性となり、青色として繊維に定着します。染液から引き上げた直後の布は黄緑〜黄土色に見え、時間の経過とともに青に変化していく様子は藍染特有の美しい現象です。還元力の強い化学建てでは鮮やかな黄緑色を呈しやすく、醗酵建てではやや茶色っぽい色合いに見えるなど、染めた直後の発色にも差があります。
この「藍を建てる」工程には、大きく分けて醗酵建てと化学建ての二つがあります。醗酵建ては、蒅を灰汁やふすまなどとともに微生物の働きで醗酵させて染液を作る方法で、伝統的かつ環境にやさしい製法ですが、気温や液の状態を見極める高度な技術と時間が必要です。対して化学建ては、還元剤などを用いて短時間で安定した染液を得ることができる現代的な方法で、効率よく染色が可能なため多くの現場で用いられています。
MITTANでは、主としてインド藍を原料とし、化学建てによる藍染を採用しています。これは安定した品質と再現性を確保しながらも、天然藍ならではの風合いを活かすための選択です。濃染めの場合には複数回にわたって染めを重ねることで、奥行きのある深い青が生まれ、繊維の種類や光の加減によってさまざまな表情を見せる生地に仕上がります。
また、藍染めされた製品は着用や洗濯を重ねるうちに少しずつ色がやわらぎ、摩擦や経年によって深みと味わいが増していきます。MITTANでは、藍のもつ変化の魅力と歴史的な価値に着目し、製作に取り入れています。
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